ムダ毛の“有効活用”は可能?体毛と毛髪の謎

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ハゲの似合う男性先日、自宅でハリウッド映画を見ていて、某俳優の姿にふと疑問を覚えました。

『体毛の豊かさと頭髪の豊かさは、なぜ一致しないのであろうか』

その俳優は、頭の毛(特におでこ)のボリュームはさみしい一方で、胸毛やヒゲはフサフサ。『顔の下半分から下に生えている毛を頭に持ってくれば、マイナス10歳ではなかろうか』と思うほど、頭髪以外は毛深いといってよい部類に属する方です。しかしよくよく考えてみると、こういう方は(特に欧米諸国の方は)日常でも見かける気が…。街中でジョギングしている人の中に、胸毛だけでなく、肘から手のひらにかけての前腕筋、さらに背中のあたりに生えている方もいて、そのワイルドさに何度か目を奪われたことがあります。

髪の毛と体毛。同じ「毛」なのに、なぜこんなにも生え方に違いがあるのでしょうか?

その答えは、「性ホルモン」にあります。

 

性ホルモンと体毛の関係

人間は、性別に関わらず男性ホルモン・女性ホルモンの両方を持っていますが、毛髪を含め体毛の濃さや量は、この「性ホルモン」が大きく影響するとされています。そして体毛は、性ホルモンの影響の差異によって、「無性毛」と「性毛」に大きく分かれます。

「無性毛」は生まれた時から体に生えている毛で、性ホルモンの影響を受けにくい体毛です。側頭部・後頭部の頭髪や眉毛、まつ毛、手足の毛がこの無性毛に含まれます。一方「性毛」は性ホルモンの影響を受ける体毛で、第二次性徴期(思春期)に目立ち始めるのが特徴。ヒゲや胸毛、ワキや背中の毛などが性毛に当たります。

性毛はさらに、男性ホルモンの影響を受けるけれども性別関係なく生える「両性毛」、男性のみに生える「男性毛」に分かれます。男性ホルモンには「筋肉や骨格の形成」「体毛の発毛」など、身体を作る働きがありますが、男性ホルモンが過剰に分泌されると、ヒゲやムダ毛(胸毛など)=男性毛の発毛を促進すると言われています。

体毛の区分

無性毛頭髪(側頭部・後頭部)、眉毛、まつ毛、手足の毛
性毛両性毛ワキ毛、陰毛
男性毛頭髪(前頭部・頭頂部)、ヒゲ、胸毛、背中の毛、耳毛

参照:フリー百科事典ウィキペディア「性毛」

皆さん。ここで、「あれ?」と思いませんか?そう、上の区分によると、男性毛には頭髪(前頭部・頭頂部)も含まれています。男性ホルモンの過剰分泌→(ムダ)毛の成長促進となれば、ヒゲやムダ毛が豊かになると同時に、髪の毛もフサフサになるのではないでしょうか。

そこに出てくるのが、以前の記事「AGA治療の有効成分デュタステリドは効かない?」の「AGAの原因」の項などでもご紹介した、ジヒドロテストステロン(DHT)の存在です。

AGA治療の有効成分デュタステリドは効かない?

ホルモン過剰は髪にマイナス

ジヒドロテストステロン(DHT)は既述の通り、男性ホルモンのテストステロンに5αリダクターゼという変換酵素が作用することで変化したものです。このジヒドロテストステロン(DHT)は、ヘアサイクルの成長期を短縮する因子を増やす働きがあり、頭皮の不毛地帯を広げていきます。5αリダクターゼが作用するテストステロンの量が多ければ、その分、ジヒドロテストステロン(DHT)も増加。すなわち、薄毛につながるというわけです。

冒頭でお話しした某ハリウッド俳優の方もそうですが、巷でよく聞く「体毛が濃い人はハゲになりやすい」というウワサの所以は、こういったホルモンの働きや仕組みからきているのではないでしょうか。ただし、上記はあくまでも、「体毛と毛髪の関係」の有力説と一つして言われているもののようです。頭髪からヒゲ、胸毛に至るまでフサフサな方もおり、「体毛が濃い=ハゲやすい」とはならないのでご注意を。

 

ムダ毛が頭髪に変身?

毛がフサフサの例

性ホルモンによって、体毛と毛髪の生え方に違いがあることは分かりました。一方で消えないのが、『他の部位にある(ムダ)毛を、頭皮に持ってくることはできないのだろうか』という思い。そして調査を進めていく中、遂に強力な情報を見つけました。

体毛による自毛植毛

こちらの記事で、AGA治療のひとつとして「植毛」をご紹介しましたが、なんと!すね毛や胸毛といった“体毛”による自毛植毛が可能だとのこと。発毛・植毛に詳しい親和クリニックのドクターによると、実際、お隣の韓国や、アメリカ、オーストラリア、欧州各国など、海外ではいわゆるムダ毛を使った自毛植毛を請け負っている医療機関があるそうです。体毛を使った自毛移植は、英語で「Body Hair Transplant(BHT)」というのが一般的で、BHTに関する文献(英語)もいくつか見つけることができました。

参考文献
Body to Scalp: Evolving Trends in Body Hair Transplantation
Body Hair Transplant by Follicular Unit Extraction: My Experience With 122 Patients

(余談ですが、BHTで検索すると、インドの医療機関サイトが多数、検索結果に出てきました。彼らの体毛の豊かさを考えると、なるほどと納得です)

 

日本でできるの?

できるか調査しかし残念ながら、現在のところ日本では体毛を使った植毛の施術例はない(※)ようです。その理由として、体毛からでは移植本数に限度がある他、毛周期の違いから頭髪としての利用に不向きであること。また、移植元となる皮膚(ドナー)に傷跡が残る懸念があること。さらに、ドナーはカラダの別の部分に移植されても元々の性質を維持する(これを「ドナー・ドミナント」と呼びます)ため、移植元と移植先の特徴が違う場合、見た目に違和感が出てくることが主に挙げられています。

確かに、体毛は髪の毛と違って細くカールしていることが多いので、例えば頭頂部にすね毛部分を移植したとしたら、不自然さは否めないですよね…。(毛髪も細くカールしている方なら、短髪ヘアに整えると大丈夫なのかもしれませんが)。日本人はまた、欧米などの大陸の方と違い、もともと体毛が薄いという点も、日本で体毛を使った自毛植毛が行われづらい理由となっています。

湘南美容外科クリニックさんのように、FUE(毛包くり抜き採取法)を使った後頭部からの植毛は行われていますが、ヒゲや身体の毛を使った植毛は、現時点ではあくまでも実験的なものに限られているようです。

 

ムダ毛が無駄じゃない未来を

衣服や文明の発達によって元々の必要性が薄くなったとはいえ、体毛は、頭髪も胸毛もワキの毛も、本来は体温を整えたり、外部の衝撃・攻撃から体を守るために生えているものです。最近では「メンズエステ」も一般的となり、男性の間で身体の脱毛が特別なことではなくなっていますが、特に、耳や鼻に生えている毛は、今でもゴミやウイルス・細菌が体内に入らないよう防ぐフィルターとして、重要な役割を持っています。

どんな毛も、私たち薄毛族には大切な毛。有効活用できるのが一番です。いつの日か近い将来、体のあらゆる毛が、必要とされる場所に安心して移植できる技術が、開発されることを願っています。できれば、私の頭髪がこれ以上さみしくならないうちに…。